普段何気なく使っている「玄関」と言う言葉、実は由緒ある言葉なようです。
「玄関」は、皆様ご存知の通り建物の正面にある入り口のことですが、もともと「玄妙(奥深く微妙なさま)な仏道に入る関門(通過するのに困難を伴うところ)」という意味であったそうです。
特に禅宗寺院では禅宗入門の第一歩をしるす場所として重んじられました。
禅宗では入門しようとしても、簡単には入門させてくれません。
門を叩き、 玄関を入り、「入門をお願いいたします」と言うと、奥から修行僧が出てきて、
「あいにく、部屋がいっぱいで、あなたを受け入れる余裕はございません。申し訳ございませんが、お帰り下さい」と慇懃(いんぎん)に断られます。
しかし、本気で入門する覚悟を持った人は、一度入門を断られたからといって、「はい、そうですか」と 引き下がる訳にはいきません。
入門を断られたのですから、寺の門の中には入れませんので、 門の外に座って入門の許しを得るまで待ちつづけます。
夕方になると、中から僧が出てきて、バケツに入っ た水を頭からかぶせられ、
「帰れ、おまえの来るところではない」と怒鳴られます。
雨が降ろうと雪が肩に積もろうと、放って置かれます。
そうして3日間くらいたつと、寺の中から、柔和な僧が出てきて、入門希望者を寺の中へと招じ入れてくれるそうです。
このような入門制度は、厳しいようですけれど、本人のためにはとてもいいと聞きます。
修行に対する甘い考えが吹っ飛び、道を求める謙虚な態度が生まれるそうです。