今では少なくなりましたが、昔の家は必ず大黒柱というのがありました。
しかし、木造伝統工法家屋の大黒柱は今でも1本だけです。
これは地震大国日本が生み出したすぐれた知恵なのです。
日本の家屋は1本1本の柱が横木としっかり固定されておらず、地震に対応して上下に運動し横揺れを防ぐようになっています。
しかし、この構造ですと、家全体の重量を支えるには無理があるため、一番太い柱(心柱)に全部の梁【はり】をかけて屋根を支えるようにしたのです。
心柱が一本であればそこへ力が加わるので、揺れても心柱はもとへ返り、建物は狂いません。
ところが、心柱を二本にすると、それぞれ別々に力が加わり、揺れてもとへ返ったときには、建物がいびつになってしまうわけです。
この中心的な柱の片側に面して、必ず台所が置かれていました。
台所には、厨房の神様である、食べ物を集めてくる大黒天が祀られていたのです。
そこで、この柱を「大黒柱」と呼ぶようになりました。
つまり、「大黒柱」は一つの家を支える大切な柱のこと。
それが転じて、一家を支える人、
あるいは広く国を支えて立つ人のことを「大黒柱」と呼んだので す。